スペイン料理は新しい上昇の時代に入った
 長らく西洋料理の本命はフランス料理といわれてきた。そして、近年イタリア料理がそのヘルシーさと気楽さがうけいれられて、フランス料理を脅かす存在になってきた。と思っていたら、時代はすでに新しい料理の旗手を発見していた。レストランエル・ブジとシェフ・フェラン・アドリア。彼が提唱した「伝統をベースにそれを最大限に現代化した」スペイン料理のあたらしいスタイルがひとびとを魅了してやまない。特にスペインで昔から伝統的に食文化の発展著しい、バスクとカタルニアがこうした最近の潮流の先導役をつとめている。
スペイン料理の真髄
 スペイン人は食に通じていることで知られる。「一日5回の食事」は決して誇張ではない。従来、ガスパチョ(アンダルシア名産の冷たい野菜のスープ)とパエジャ(スペイン風、魚介の五目飯)に代表されてきた、スペイン料理に、いまや生ハムやいわしの酢漬けをつまみ辛口シェリー、ピンチョス(一口のつまみ)にリオハワイン、そしてイカ墨のパエリャ、と多彩な料理を多様に楽しむものへと進化が著しい。
深谷シェフに特別インタビューを行いました

ー本日はレストラン バスクで提供される料理についてお聞きできればと思います。特に自家製生ハムが人気と伺いました。ときには深谷シェフが目の前で切り分けてくださるとか。

深谷:はい。レストランバスクは1981年に開店したのですが、当時の日本にはまだ熟成生ハムというものがありませんでした。今では日本でも熟成生ハムはよくみられるんですが、当時は輸入も禁止されていたので、今の場所に店舗を移転した際に仕方なく作ったのがはじまりです。現在バスクでは年間60頭の生ハムを作成しています。白豚を40頭、黒豚を20頭。函館の豚を添加物ゼロで乳酸発酵させています。

ーそうだったのですね。スペインで学んだ料理を日本のレストランでふるまうには、苦労も多かったのでしょうか。

深谷:料理の修行を終え、ヨーロッパから日本に帰ってきたときに、向こうで食べてたタイプのパンが日本にはなく。パン屋さんに頼んだんだけど断られてしまい、これも自分で作り始めました。その頃の流れがあり、今も毎日焼いています。アンチョビも缶詰ものもしかなく、自家製のものを25年前から作っています。当時は独学で文献を読んで作ったのですがうまくいかず、スペインの工場を訪ねてですね、研究を重ねて少しずつ美味しく作れるようになりました。アンチョビは年間200~300kg仕込んでいます。

ー現地の食材が手に入らない中、伝統を汲んだスペイン料理へのお気持ちが伺えます。「より自然なもの、原点に近いものを素材に」という深谷シェフの想いをとても感じます。

深谷:ソーセージも香辛料を揃えて、男爵黒豚のあらびきソーセージを作っています。野菜は34年前から自分で畑を作っていて、店から出るざんざ(野菜クズ、魚のフィレのかすなど)を肥料にして無農薬で作っています。猫のひたいほどの畑ですが、実際やってみると大変で、農家の方には頭が下がる想いです。作物は取れる量は少ないですし、見た目もよくはないのですが、味の良いものを出しております。アンチョビイワシの魚醤も作っており、魚介系の料理の隠し味としております。ぜひ、素材にこだわったオリジナル料理をご賞味ください。

スペイン関連
 
 
 (2007年)

Copyright (C) 2004 Restaurante Vascu. All Rights Reserved.